『母親やめてもいいですか』ほか

最近読んだ発達障害当事者・家族の体験記をいくつかご紹介。


■『自閉っ子、こういう風にできてます!』/ニキ・リンコ、藤家寛子
■『自閉っ子のための努力と手抜き入門』/ニキ・リンコ、浅見淳子

関係者の方には「何をいまさら」だと思いますが、成人後にアスペルガーの診断を受けた著者の対談本。
言葉の受け取り方や思考の違い(いわゆるコミュニケーションやイマジネーションの特異性)もだけど、やはり身体感覚の違いが興味深かったです。

苦手なものを「おいしいよ」と言って食べさせないでほしい(むしろ「おいしくないけど必要だから食べなさい」と言ってほしかった)、というのはなるほどなぁと思いました。

自閉っ子、こういう風にできてます!

自閉っ子、こういう風にできてます!

自閉っ子のための努力と手抜き入門

自閉っ子のための努力と手抜き入門


■『母親やめてもいいですか』/山口かこ

ちょっと前にネット上で物議を醸してた本。
発達障害をもつ娘の子育てに奔走しながらも、少しずつ歯車が狂い、不倫・離婚へと至った著者の体験記。
あまり例のない赤裸々な描写を貴重だと評価する人がいる一方で、「子どもの障害を言い訳に自分の身勝手さを正当化している」と不快に感じる人も多いようです。(詳しくはAmazonレビュー参照。)

僕自身はそれほど否定的な感情は持たず、わりとニュートラルに読めました。
著者の行動レベルでは、確かに批判されても仕方ない面もあるかもしれません。
ただ、障害のある(あるいはもしかしたら障害の有無にかかわらず)子どもを育てることを、それだけしんどく感じる人がいるのだということは事実。
そして、同じような状況の中、「母親をやめる」選択をした著者に嫌悪感をもつくらい、日々懸命に子育てしている親御さんがたくさんいるのだということも。
それらをリアルに感じられるという点で一読の価値はある本と思います。

母親やめてもいいですか

母親やめてもいいですか


■『ニトロちゃん』/沖田×華

荻上チキさんが推してた、作者の学生時代の体験記的マンガ。
この本で一番印象に残ったのは、あとがきに載っていた、当時を知る同級生がこの本を読んで微妙な反応をしていたというくだり。
それだけ本人の内的体験と、周囲の目に映る客観的現実にズレがあるということなのでしょう。


■『ボクの彼女は発達障害』/くらげ

PDDを抱えるパートナーとお付き合いしている著者の、ノロケ日記。
日常の中で起こるトラブルを描いているのですが、「彼女の負担になることは要求しない」という丁寧で徹底した著者の対応のスタンスが素敵です。
マジョリティに合わせるのではなく、それぞれのカルチャーの間で折り合いをつけるという考え方が自然にできると、こんなふうにうまくいくのだなぁと思い知らされます。

ボクの彼女は発達障害 (ヒューマンケアブックス)

ボクの彼女は発達障害 (ヒューマンケアブックス)