『子どものための発達トレーニング』

ゴールデンウィークに読んでいたのですが、感想を書く前にネットで話題になってしまい、後追い感が否めないレビューに。。


書店でタイトルを見ておっと手を伸ばし、著者名を見ておっと手を止めるも、中心となる発達トレーニングの部分は現場の臨床心理士・臨床発達心理士の方々が執筆していることを確認して購入しました。


発達課題を従来の診断ベースではなく、注意力、ワーキングメモリ、視覚・空間認知等、認知機能ごとに分けて記述しているところは実用的です。

また、

<注意の課題>

  1. 注意の持続
  2. 選択的注意
  3. 注意の転換
  4. 注意の分配

<社会性の課題>

  1. 注意・関心の共有
  2. 模倣と情緒的チューニング
  3. 心の理論と見立て遊び
  4. 能動的コミュニケーション
  5. 共感的、相互的応答
  6. 常識的なコミュニケーションと暗黙のルール

とさらにブレイクダウンしているところも参考になりました。


レーニング方法も、オーソドックスなものを中心に具体的に載っています。(幼児で使えそうなものはあまり多くなかったですが)


ただ、場面緘黙の子どもに発声練習を促す方法や、終章に差し込まれている「愛着アプローチ」なるものなど疑問符のつくものもあり、そのあたりは要注意と感じました。

発達支援のベースに安定した愛着関係が必要なのはそのとおりなのですが、「産後すぐ母親が働き始め」「幼い頃から叱られることが多」かったというだけの事例を「愛情不足やネグレクトからくる愛着障害」と診断するのはちょっと見識を疑います。

本人の特性か愛着の問題かというのは簡単に鑑別できるものでもなく、丁寧な見立てに沿った対応が必要なわけで、「発達トレーニング」の一つとして「愛着アプローチ」を取り上げるのはいささか軽率ではないかと感じました。