キャリアの話。(前編)

世の中的にはあまり一般的でない仕事をしているせいか、わりと頻繁に「なんでその仕事を選んだの?」と訊かれる機会に出会います。

そのたびにいつも適当に思いついた答えを返すのだけれど、いつも中途半端で不完全に終わってしまうのは、そもそもそんなにはっきりした理由がないから。

それでもここに至るまでにいくつか考えてきたことはあって、備忘録的に一度言葉にしておきたいと思っていたので、自分メモとして書き留めておきます。


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「将来の夢」とか「なりたいもの」というのは、思い返せば時代ごとにいくつかあって、幼稚園の頃は「パン屋さんになりたい」という絵を描いた記憶があります。

小学生のときは、「生きもの地球紀行」とか見るのが好きだったのと、ヒトと関わるのがあんまり得意でなかったので、動物とか植物とか、“自然を守る人”になりたいと漠然と思っていました。

中学生のときは漫画の影響で、「海賊になる」とずっと言っていました。(卒業文集みたいのにまで。。)

そして、直近の大学の志望学部選びを控えて、まじめに将来の職業というものを考えたのが、高校生のときでした。


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最近知り合った人に訊かれたのが、「やりたいことを仕事にしましたか?できることを仕事にしましたか?」という質問。
これはなかなか秀逸な問いで、振り返ってみると僕の選択は完全に後者から始まっています。

職業選択にあたって、まず誰もが「好きなことを仕事にできたら」と考えると思うのだけれど、これといって趣味のなかった僕には、選択肢が思いつきませんでした。
(唯一好きなことといえば本を読むことなのだけど、本を読むだけでお金が稼げる仕事が思いつかなかったので、5分で諦めた。)

じゃあ、と次に考えたのが、何か人の役に立つことでもしよう、ということ。
得意なことを生かして人の役に立てれば、それなりにやりがいがあるんじゃないか?しかし、これといって特技のなかった僕は、やはり選択肢が思い浮かびませんでした。

誰かの役に立つには、何をしたらいいんだろ?ぼんやりと考える中でようやく1つ思いついたのが、“子どもに何かを伝える”という仕事。自分が通ってきた道をこれから歩いてくる子どもになら、自分の薄っぺらい人生経験の中からでも、何か伝えられることがあるかもしれない。

そこでまず考えたのが「教師」でしたが、人前で話すのが苦手な自分が教壇に立つなんて無理だな…と3秒で却下。
一対一で相手ができる仕事ってないかな…。あ、そういえば…スクールカウンセラーっていたな。学校にいて、子どもの悩みを聴く仕事。そういえば一度、友だちの話を聴いてただけで、聴き上手って言われたことあったな。“話を聴くだけ”の仕事なら、自分にもできるかもしれない。これいいかも。

今から思えば笑ってしまうほど短絡的な思いつきでしたが、初めて描いたキャリアビジョンはこうして、何かの原体験に基づくものではなく、思考の産物として、ひとまず「子ども相手のカウンセラー」にたどり着いたのでした。


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よく“子ども好きな人”だと思われていて、今でこそ確かに子どもはかわいいと思っていますが、上に書いたように、決して子どもが好きだから今の仕事を選んだわけではないのです。5コ以上年の離れた子どもと接する機会なんてそれまでの人生でほとんどありませんでした。

子どもの仕事をするんなら実際に子どもと接しておかなきゃな…と考え、意識的にそういう場に足を踏み入れるようになったのは、大学生になってからのお話。


後編につづく