キャリアの話。(後編)

前編はこちら

子どもの仕事をするんなら実際に子どもと接しておかなきゃな…と考え、学童保育のアルバイトを始めたのが大学3年のときでした。夏休みまるまる一ヶ月、小学生の子どもと毎日遊んで、このとき初めて、“子ども”とはどんな生き物なのか、身をもって知ったのでした。

この経験から僕が感じたことは、子どもの逞しさ。賢さ。感性の鋭さ。底なしのエネルギー。ちょっとかまってあげたくなる子もいたけれど、子どもたちは毎日楽しそうで、全力で遊んでいました。あれ、この子たち、別におれが何かしてあげなくても幸せなんじゃないの?

実際に子どもと触れ合う経験を通して、僕の目指す方向は若干軌道修正することになります。すなわち、子どもたちに必要なのは直接の相談相手よりも、「毎日楽しく過ごせる環境」で、「子どもの高い柔軟性をもってしても適応できないような劣悪な環境に置かないこと」なんじゃないの?と。
そして、以前から子どもが被害者・加害者になる事件の報道はアンテナにかかりやすかったのですが、取り上げられる頻度が少しずつ増えてきた“子ども虐待”の問題にさらに関心をもつようになりました。
この頃から僕のやりたいことは、子ども支援から「子育て支援・子ども虐待予防」にシフトしていきました。


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学生生活の中でいくつかの団体活動を経験し、以前は趣味も特技も思いつかなかった僕も、自分が好きでワクワクできることや、こういう役割なら人から認めてもらえる程度にこなせる、ということに気がつくようになりました。

世の中には直接的支援ではない形で貢献できる様々な職業があるということも知りました。

そういった経験を通して、自分の中で出たひとまずの結論が、「子育てをする中で悩み・困り・不安を抱える養育者と、専門スキルをもつ支援者が出会うフィールドをつくりたい」というものでした。
自分から求めなければ支援を得られず、しかしどこでどんな支援が得られるのかわかりづらく、しかも必要な人ほど支援を求めようとしない現状があり、そのハードルを少しでも下げたいと思うようになりました。

そしていったんはそのフィールドとして保育関係の事業者を選択し、今は一支援者として自分のスキルを高めるべく、再び臨床現場にいます。

支援者としては駆け出しの半人前であり、目の前の課題に追われる日々に、あれ?今どっちに向かってるんだっけ?と思うこともありますが、当初の目標に自分の中でつなげていけるように、ときどき振り返らなきゃなぁと自省しています。


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と、いうのがこれまでの僕のキャリアの話でした。

こうやって振り返るとわりとやりたいように進んできていて、「主体的なキャリア選択」をしているようにも見えるのですが、自分の場合はたまたま自由な選択が許される環境と周りのご縁に恵まれていただけだと思っています。
選択肢が多いというのは本当に幸運なことだと、改めて思います。


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前編で海賊になりたかった話を書きましたが、別に海が好きなわけでも、略奪をしたかったわけでもないのです。
それぞれが役割と目標をもってチームで楽しく旅をする、そんな生き方に憧れたのでした。
実際いつか旗を揚げようという野心はありますが、それはもう少し、先のお話。


いったんおわり