『家族幻想』

杉山春さんの新著。「ひきこもり」がテーマではあるけれど、扱われているのはその背景にある「家族」の病理。

「家族」、あるいはもっと上の世代からの「イエ」の規範に縛られ、内面化していったその価値観・役割に自分が見合わないことで、身動きが取れなくなってしまう人たちの物語。


理想の子どもとしての役割にとらわれた人の問題が「ひきこもり」として、
理想の親としての役割にとらわれた人の問題が「虐待」として、
ときに噴き出してくるのだろうと思う。


「我が子に他者性を持つことは、実は、現代の新しい『規範』なのではないか。」

という提起には、深く頷いてしまった。


親子は他者だというと、西洋的個人主義で日本には馴染まないとかいう人もいそうだけれど、「子どもは親と違う感じ方・考え方をする別の人間だ」という認識は、もっと共有されていいと思う。


叱られたって期待されたって、やりたいことはやりたいし、できないことはできないんだよ。


そこで方針転換することにもっと寛容であってほしいと思うし、

子どもが逃げたいと思ったときに、受け皿を用意できる社会でありたいと、ここでも思った。


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