『ノーモア立川明日香』

ノーモア立川明日香

ノーモア立川明日香

児童養護施設出身で、「自分のような子どもを増やしたくない」「養護施設の現状や里親・養子制度を変えたい」との思いから政治家を志し、26歳で市議会議員になった立川明日香さんの半生を取材したルポ。

当選のニュース↓でその思いを読んだときには、施設出身者のロールモデルとして、社会的養護の問題に光を当てる政治家として、また同世代で活躍する人として、ぜひ頑張ってほしいと思っていたのだけれど、彼女はその後市内に居住実態がなかったとして「当選無効」となり、議員辞職となってしまった。

(藤川氏超え? 新人市議は26歳「タレント」 ぶっちぎり独占取材!(元記事削除のためアーカイブ))


当時から「美人すぎる市議」として注目され、この本もセミヌードグラビアとかついてるので、ただのスキャンダル本にみえるけれど、実際は彼女のパーソナリティに焦点をあて、「愛着形成」をテーマに据えた重みのある本。

すなわち、生後まもなくから乳児院に預けられ、18歳まで施設で育った彼女の人付き合いのあっさりさ、執着のなさ、適切な距離のとれなさが、彼女のその後の人生にしばしば影を落としていることが、関係者の里親さんの解説を交えながら描かれている。

彼女は例えば『誕生日を知らない女の子』に登場する子どもたちのように、養育者による直接の虐待の被害者ではないけれど、大舎制の施設内でときに虐待が横行するという日本の社会的養護の貧弱さ、いわゆる“社会によるネグレクト”の被害者とも言えるのだろう。

彼女自身は大学進学率5%という施設出身者の中で短大に進学し、自費で留学もしていたり、宅建に一発で合格したり(僕は昔そこそこ真面目に勉強したのに落としたことがある)と能力のある人なので、選挙のレギュレーションに引っかかり議員を辞めざるを得なかったことは残念でならない。

この本が社会的養護の現状に関する問題提起として読まれることを願ってのレビュー。