pay it forward

転職して半年経った。

職場や業務にも慣れてきて、立場も新人ではあるけれどお試しから一専門職として扱われるようになり、やりがいとともに力不足を感じることも多くなってきている。

単純に知識が足りなかったり、求められることが知識だけでは応えられなかったり、見立てが甘かったり、根拠がなかったり…。
不安でいっぱいのお客さんを更に不安にさせて帰らせるという最悪なケースもある。

今はとにかく、一つ一つの失敗から学んで、一つ一つ身につけていくしかないと思っている。

悩むけれど、仕事は楽しいです。



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大学院時代の恩師が亡くなった。


心理の業界に復帰して、当たり前のようにこれからまたお世話になるつもりでいたし、困ったときには相談をし、何かを為したときにはご報告したかった。他の人も言っていたけれど、なんとなく、いつか自分が結婚式をするとしたら先生にご挨拶いただくのだろうと思っていた。それも叶わなくなったことを、本当に残念に思う。


院試の願書の一行目に「子ども虐待をなくしたい」と書いたら、「随分だいそれたことを言ってますけど」と先生に笑われたのだった。
最初から博士進学はしないと明言し、かと言って何がしたいのかもよくわからない僕をきっと先生も持て余していたと思うのだけれど、それでもフワフワとした僕の思いを最大限に汲み取って、ことあるごとに実習先やインフォーマントを紹介してくださった。おかげで、貴重な体験を数多くさせていただけたことを、ありがたく思っている。
だからこそ、「ぼくがやりたかったのはこんなことなんですよ!」と、いつかご報告したかった。


臨床面では、僕が抱える弱さを自覚化させてくださったことが、一番大きいと思う。
「もっと強欲になっていい」とか、ときどきえっと思う表現での助言に笑ってしまったりもしたけれど、いつも本質をついている。嘘にならず、本質を失わず、でも相手を不快にさせない、そういう表現の仕方があることも、先生から学んだ。
スーパービジョンの中でその他数々の示唆を与えてくださったと思うのだけれど、残念ながら僕が受け止めきれたものはおそらくごくわずかだったろうと、振り返って思う。それでも僕にとっては、唯一といっていい財産だ。


僕にできるのは、そこで掬いとったわずかなものを、そこから僕が生み出していくものを、これからなんとかして、次の誰かの役に立てていくことなのだろうと思う。そんな月並みな恩返ししか思いつかないけれど、それだって全く簡単なことではなく、日々少しずつ、積み重ねていくしかない。やるべきことは今までと変わらない。






明日は告別式には出ず、普通に仕事に行こうと思う。

ちょこっとでも、今を生きる次の誰かのお手伝いをするために。










Rest in peace.


感謝を込めて。